ねずみ君ち

読書やゲームやその他日常のことを細々と。

散文 #5

先日、どこか旅行に行きたいなあとぼんやり考えていて、これまで観光で行ったことのある場所を数えてみました。

札幌、小樽、十和田湖、平泉、日光、大洗、浅草、ディズニーランド、大阪梅田、京都、黒部、熱海、広島、倉敷、沖縄、あげてみるとけっこうあちこちを観光していました。海外は無し。でも海外はひとりだとちょっと無理そうなので今回は却下かなぁ等々...。思い描いているときはとても楽しいものです。

よくよく思い返してみるとこれまで一人旅というのをしたことがなかったなあと思います。普段ひとりでいるのは好きなのですが、見知らぬ土地でひとりぼっちというのはやはり少し勇気がいるかもしれません。しかしいずれは一人旅にチャレンジしてみたいと考えています。

 

さて、私が旅行について思い出したり考えたりするときには、「オムライス男」について言及しないわけにはいきません。

「オムライス男」とは、以前交際していたカズ君のことです。なぜ「オムライス男」なのかは後述いたします。

 

カズ君は旅行が大好きで、飛行機が大好きで、恋人である私をほぼ毎月旅行に連れ出していました。

旅行先はできる限り飛行機で行ける場所が選択され、多かったのは大阪からの京都、沖縄、北海道でした。

1年程の交際期間の間に、大阪京都は3回、沖縄にも3回、北海道は2回、足を運びました。東京方面にも参りましたが、そのときはさすがに新幹線だったと思います。

カズ君はなんというか甘えん坊で、いま思い出すと笑ってしまうのですが、よくシッカロールの匂いがしていました。甘えるのは私にだけではなく、おそらくご家族に対しては余計に甘えん坊だったのだろうと思うのですが、旅行に行く度にお母様へのお土産を購入しており、交際しているときにはご家族思いの良い人だなあ等と思っていました。

 

そんなお付き合いも、すれ違いや意見の食い違いからちょっとした喧嘩になることも多くなり始め、旅行に同行するのが若干面倒だなぁと感じていたころに、事件は発生しました。

 

カズ君はブログを開設していて、そこには飛行機の写真や旅行の写真をたくさん載せていました。たまに私にも見せてくれていたのですが、ある日のブログに「彼女に作ってもらったオムライス」というコメント付きの写真を載せていました。

それは私が作ったオムライスではありませんでしたし、映り込んでいるテーブルウェアにもまったく覚えがありませんでした。しかし(あとで思うと本当にバカみたいなのですが)、私はその時なぜかカズ君に問い詰めることもせず、そのことをうやむやにしてしまったのです。

 

その3日後、私達は沖縄にいました。食事中、買い物中、観光中にやたらと意見が食い違います。以前からそれほどお互いに気を遣ってはいなかったのですが、通常なら軽く受け流して終わりになるところでもいちいち口喧嘩になるのです。一緒に行動したくないから先に帰ろうかと何度も思いましたが、せっかくの観光なので我慢をしていました。

しかし、帰りの飛行機の中でも険悪ムードだった私達は、空港に降り立った時に限界が訪れ、片手にスーツケースを持った状態で、お別れをしたのです。

その時カズ君からは、「お前がわがまますぎてついていけない」というお言葉をいただきました。私はわりに人の言葉をそのまま受け取るので、その時は「そうか、私がわがままであったのだな」と思い、反省したものです。

 

半年後、カズ君からよりを戻したい旨の連絡がきました。そして、じつはお別れしたときには別の女性と浮気をしていた、ということもカミングアウトするのです。私は、「まったく意味が分からないし今となっては心も動かない」旨の返答をしました。

私はそれ以来「オムライスが好き」というオムライス男くんには関わらないようにしています。

 

さて、旅行からはだいぶ話がそれてしまいましたが、私があまり遠出をしなくなったのはそのオムライス男によるトラウマのおかげかもしれません。今後は「旅行」というものに対してもっと明るい気持ちになっていければ良いなあと思っています。

 

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※散文と題して書いている文章の内容は、すべてが実話というわけではありません。