ねずみ君ち

読書やゲームやその他日常のことを細々と。

読書日記 『君と夏が、鉄塔の上』賽助 著

 

君と夏が、鉄塔の上

君と夏が、鉄塔の上

 

 

対象は様々ですが、「これはとうとう出会ってしまったなー!」と思うことって、たまにありますよね。

今回の本は、以前から作者本人の大ファンであるために発売をとても心待ちにしていて、発売日も完璧にチェックしており、言わば出会うべくして出会った、いや自分から出会いに行ったというかんじではあるのですが、読み物ですから、読むまでは分からないわけで、読んだら出会ってしまった!の感想を書きます。

(ネタバレもあるかもしれませんので、これからお読みになるかたはブラウザバック推奨です)

 

作者本人のファンである場合、それが良くも悪くも影響して、わたしは果たして物語を本当に読んでいるのか?、という感覚に陥ることも多いと思います。わたしもそうですし、この本を読み始めたときもおそらく目はハートになり、主人公として頭に浮かんでいるのは作者本人の姿だったと思います。

しかし読み進めてみると、主人公の伊達くんは、伊達くんとしていろんなことを考えたり走ったり食べたりしていて、気がつくと伊達くんと同じように、嬉しかったり寂しい気持ちになったり、心臓がバクバクしたりしているのでした。

そして作者の、鉄塔への愛を強く感じました。ほんとに好きなのだなあと思いました。その鉄塔がゆったりと見下ろす公園で、帆月ちゃんや友達と一緒にベンチに座り、麦茶を飲んだり、蝉の声を聴いたり、鉄塔の上に座る男の子を観察するために手を握ってドキドキしたり、するのです。公園には伊達くんの好きなものがいっぱいあるのだなぁと思いました。しかし公園の外には、危険で苦しい冒険が待ち受けているのでした。

中学生の頃の夏はまさに青春のただ中で、この本ではその夏の情景を存分に味わうことができます。でもわたしが一番惹かれたのは「ひと夏の青春」の部分ではありませんでした。この物語では、何かを強く思うことの大切さというか、そうゆうことを伊達くんを通して語られているのではないかと、そう感じました。伊達くんはそれを、不器用に悩みながらも目指すどこかに、あるいは誰かにつなげていこうとしている、と思いました。

読み終えたときに、誰かと手をつなぎたくなる物語です。

前作同様、何度も読み返すであろう本と出会えて幸せです。

 

 

(前作についての感想も書いてます)

arresmg.hatenablog.com

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さらにすこし修正しました。「一番惹かれたのは」のあたりです。

言い回しというか、最初に書いたもののニュアンスが自分で気になったもので。

文章はむずかしい。