ねずみ君ち

読書やゲームやその他日常のことを細々と。

読書日記 『銃』 中村文則著

いつも読書の感想を書くときは数日経ってから書くことが多いのですが、なぜかというと頭の中で感想がまとまってきたら書くというかんじだからです。しかしこの『銃』はいま読み終えてすぐ感想を書きます。なぜかというと読み終わって頭痛がしてる状態で書いたほうがこの本の感想としては良さそうだからと思ったためです。(ネタバレあるかも注意)

 

銃 (河出文庫)

銃 (河出文庫)

 

 個人的に、『銃』、『遮光』、『掏摸』の主人公はけっこう似ていると思います。境遇とか、性質とか、行動パターンとか。でも『掏摸』の主人公はだいぶ大人で冷静なかんじかな。自分のやっていることはわかってるという感じがしますね。

それに対して『銃』の主人公は、偶然拾ってしまった銃にとりつかれたようになって完全に翻弄されている印象です。しかし銃は単に物ですから、主人公が勝手にそれに意味を見出しすぎてて、まるで銃に操られているかのようにおかしくなっていきます。具体的には人間を銃で撃つという行動に向かっていくことになります。この結末のようになるのは必然であって、きっかけさえあればいつでもこうなっていたのか、銃を手に入れなければこんなことにならなかったのか、とか色々と考える終わり方でした。

だいたいこの主人公は、他人との関わりや周囲の物事を基本的に面倒と思っているし、打ち込んでいることも特に無い大学生で、そんな毎日の中で突然に夢中になれる対象である『銃』を手に入れるのですが、なぜそれほどまでに『銃』に魅せられてしまうのか、とも思ったり。物語が進むにつれて、けっこうギリギリの精神状態で生きていたのかなあと思わせる描写も出てくるのですが、何よりも主人公の性格の傾向みたいなものが大きく作用している気がしました。

それともうひとつ持った感想としては、最初は夢中になれたものも、時間の経過とともにあれこれとこねくり回したり、考えすぎたりすることによってなんだか台無しにしてしまうことってあると思います。それが銃だからこそ危険だし引き起こす結果としては取り返しがつかないのだけれども、見方を変えれば、単純に他人との関係性とか、あるいは仕事との関わり方とかにも通じるものってあるのではないかなあと思いました。しかしバランスをとることを考えてばかりでは何も始まらないし進まないもので、悩ましいところです。

それと、夢中で何かに打ち込んでやっていることと、何かに夢中になるあまりに頭がおかしくなることってすごく似てると思うのですが、そうなると普段、自分は狂ってなんかいないと思っていてもけっこうきわどいギリギリの場所にいたりするのかなあとか、思いました。わたしは、この『銃』や『遮光』の主人公に感じる性質と同じものを自分に感じることがあるので、自分を見失わないようにしたい、けど自分を忘れるくらいの対象も存在して欲しいとか、色々と勝手なことを考えた本でした。

それではまた。