ねずみ君ち

読書やゲームやその他日常のことを細々と。

近況的+

先日とあるネットショップとのやりとりでトラブルがあり、なんだか少々いやな感じがしたので、同じメールアドレスを登録しているツイッターへの連携を解除したり、ツイッターのプロフィールからこのブログへのリンクを消したり、インスタは鍵をかけたりなどしました。

わたしの単なる取り越し苦労とは思いますが、危機管理対策はやっておいて損は無いと思いますので、簡単にできることくらいはしておこうかなと思います。

それにSNS等で絡みのあるかたへご迷惑がかかることもあるかもしれませんし、その中にこのブログを見てくださるかたがいるかどうか分かりませんが、しばらくはこのままでひっそりとやっていきたいと思います。

 ツイッターとの連携を復活するかどうかは分かりません。様子を見て特に問題が無いようであれば復活をしようかなと思っています。

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こないだ上記のように書いていた件で、わざわざ追記することでもないのですが、さっきネットショップの運営責任者を語るひとからお詫びらしきメールが届きまして、もうなんか自分も含め色々バカバカしくなってきたのでここらで切り替えることにします。

一週間程だけどなんとなくインターネットが嫌になってしまい、便利だけどちょっと怖いことも見聞きするしなあ等と思い、利用方法を少し考えなければ..などと思いました。 でも特に怖いこともなにも無かったので良しとします。

今日は台風が来るし、交通機関も止まったりするみたいなので自主的に欠勤しました。おかげで気分がのんびりしているので良い気晴らしになりました。いつまでも鬱々としているのはやめて、ゲームでもして気分を切り替えていこうと思います。

この記事もほんとは消してもいいのだけど、自分に対する戒めにもなるだろうしこのまま残しとこうかな。

 

散文 #5

先日、どこか旅行に行きたいなあとぼんやり考えていて、これまで観光で行ったことのある場所を数えてみました。

札幌、小樽、十和田湖、平泉、日光、大洗、浅草、ディズニーランド、大阪梅田、京都、黒部、熱海、広島、倉敷、沖縄、あげてみるとけっこうあちこちを観光していました。海外は無し。でも海外はひとりだとちょっと無理そうなので今回は却下かなぁ等々...。思い描いているときはとても楽しいものです。

よくよく思い返してみるとこれまで一人旅というのをしたことがなかったなあと思います。普段ひとりでいるのは好きなのですが、見知らぬ土地でひとりぼっちというのはやはり少し勇気がいるかもしれません。しかしいずれは一人旅にチャレンジしてみたいと考えています。

 

さて、私が旅行について思い出したり考えたりするときには、「オムライス男」について言及しないわけにはいきません。

「オムライス男」とは、以前交際していたカズ君のことです。なぜ「オムライス男」なのかは後述いたします。

 

カズ君は旅行が大好きで、飛行機が大好きで、恋人である私をほぼ毎月旅行に連れ出していました。

旅行先はできる限り飛行機で行ける場所が選択され、多かったのは大阪からの京都、沖縄、北海道でした。

1年程の交際期間の間に、大阪京都は3回、沖縄にも3回、北海道は2回、足を運びました。東京方面にも参りましたが、そのときはさすがに新幹線だったと思います。

カズ君はなんというか甘えん坊で、いま思い出すと笑ってしまうのですが、よくシッカロールの匂いがしていました。甘えるのは私にだけではなく、おそらくご家族に対しては余計に甘えん坊だったのだろうと思うのですが、旅行に行く度にお母様へのお土産を購入しており、交際しているときにはご家族思いの良い人だなあ等と思っていました。

 

そんなお付き合いも、すれ違いや意見の食い違いからちょっとした喧嘩になることも多くなり始め、旅行に同行するのが若干面倒だなぁと感じていたころに、事件は発生しました。

 

カズ君はブログを開設していて、そこには飛行機の写真や旅行の写真をたくさん載せていました。たまに私にも見せてくれていたのですが、ある日のブログに「彼女に作ってもらったオムライス」というコメント付きの写真を載せていました。

それは私が作ったオムライスではありませんでしたし、映り込んでいるテーブルウェアにもまったく覚えがありませんでした。しかし(あとで思うと本当にバカみたいなのですが)、私はその時なぜかカズ君に問い詰めることもせず、そのことをうやむやにしてしまったのです。

 

その3日後、私達は沖縄にいました。食事中、買い物中、観光中にやたらと意見が食い違います。以前からそれほどお互いに気を遣ってはいなかったのですが、通常なら軽く受け流して終わりになるところでもいちいち口喧嘩になるのです。一緒に行動したくないから先に帰ろうかと何度も思いましたが、せっかくの観光なので我慢をしていました。

しかし、帰りの飛行機の中でも険悪ムードだった私達は、空港に降り立った時に限界が訪れ、片手にスーツケースを持った状態で、お別れをしたのです。

その時カズ君からは、「お前がわがまますぎてついていけない」というお言葉をいただきました。私はわりに人の言葉をそのまま受け取るので、その時は「そうか、私がわがままであったのだな」と思い、反省したものです。

 

半年後、カズ君からよりを戻したい旨の連絡がきました。そして、じつはお別れしたときには別の女性と浮気をしていた、ということもカミングアウトするのです。私は、「まったく意味が分からないし今となっては心も動かない」旨の返答をしました。

私はそれ以来「オムライスが好き」というオムライス男くんには関わらないようにしています。

 

さて、旅行からはだいぶ話がそれてしまいましたが、私があまり遠出をしなくなったのはそのオムライス男によるトラウマのおかげかもしれません。今後は「旅行」というものに対してもっと明るい気持ちになっていければ良いなあと思っています。

 

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※散文と題して書いている文章の内容は、すべてが実話というわけではありません。

読書日記 『君と夏が、鉄塔の上』賽助 著

 

君と夏が、鉄塔の上

君と夏が、鉄塔の上

 

 

対象は様々ですが、「これはとうとう出会ってしまったなー!」と思うことって、たまにありますよね。

今回の本は、以前から作者本人の大ファンであるために発売をとても心待ちにしていて、発売日も完璧にチェックしており、言わば出会うべくして出会った、いや自分から出会いに行ったというかんじではあるのですが、読み物ですから、読むまでは分からないわけで、読んだら出会ってしまった!の感想を書きます。

(ネタバレもあるかもしれませんので、これからお読みになるかたはブラウザバック推奨です)

 

作者本人のファンである場合、それが良くも悪くも影響して、わたしは果たして物語を本当に読んでいるのか?、という感覚に陥ることも多いと思います。わたしもそうですし、この本を読み始めたときもおそらく目はハートになり、主人公として頭に浮かんでいるのは作者本人の姿だったと思います。

しかし読み進めてみると、主人公の伊達くんは、伊達くんとしていろんなことを考えたり走ったり食べたりしていて、気がつくと伊達くんと同じように、嬉しかったり寂しい気持ちになったり、心臓がバクバクしたりしているのでした。

そして作者の、鉄塔への愛を強く感じました。ほんとに好きなのだなあと思いました。その鉄塔がゆったりと見下ろす公園で、帆月ちゃんや友達と一緒にベンチに座り、麦茶を飲んだり、蝉の声を聴いたり、鉄塔の上に座る男の子を観察するために手を握ってドキドキしたり、するのです。公園には伊達くんの好きなものがいっぱいあるのだなぁと思いました。しかし公園の外には、危険で苦しい冒険が待ち受けているのでした。

中学生の頃の夏はまさに青春のただ中で、この本ではその夏の情景を存分に味わうことができます。でもわたしが一番惹かれたのは「ひと夏の青春」の部分ではありませんでした。この物語では、何かを強く思うことの大切さというか、そうゆうことを伊達くんを通して語られているのではないかと、そう感じました。伊達くんはそれを、不器用に悩みながらも目指すどこかに、あるいは誰かにつなげていこうとしている、と思いました。

読み終えたときに、誰かと手をつなぎたくなる物語です。

前作同様、何度も読み返すであろう本と出会えて幸せです。

 

 

(前作についての感想も書いてます)

arresmg.hatenablog.com

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さらにすこし修正しました。「一番惹かれたのは」のあたりです。

言い回しというか、最初に書いたもののニュアンスが自分で気になったもので。

文章はむずかしい。

ゲームの感想 『 Hurtworld 』

そのまんまのタイトルです今晩は。

昨年末から今年上半期にかけてけっこうたくさんのゲームをプレイしたので、ブログに残しておきたいと思いました。数年後に「相変わらず同じようなゲームやってんなー」などと懐かしんだりできることを期待しつつ。

いくつかのゲームについてはしつこい感想を書こうと思っていますが、スクショとかはほとんど貼らないと思いますし、あくまでも個人的な感想のみです。攻略とか、してないです。おそらくなんの役にも立たないと思います。と最初に免責を。

 

Hurtworld

たしか、このゲームを皮切りにPCゲームを色々と遊ぶようになったと記憶しています。荒涼とした世界にパン一でポンと投げ出され、飢えや凍死、見知らぬプレーヤーの略奪行為、モンスターや動物の攻撃(鹿すら向こうから襲ってくる)に対処しながら、冒険したり、クラフトしたり、強くなったり、心が荒んだりするやつ、です。

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こんな世界に投げ出される。ほんとはただぷらぷらと歩き回ったりのんびり家を作ったりしたい。

 

最初はフレンドリーな日本人プレーヤーも多くて、たまに声をかけてくださるかたや、名前を覚えていてくださるかたなどもいてとても楽しかったのですが、プレーヤーが多くなるにつれて過酷になり、ひたすら身を隠して行動するようなかんじとなり、ゲームの世界をただプラプラと歩き回ったりするのが好きな自分は、心が折れてしまったのでした。しかしこういったゲームはなんでもありなノリで楽しむものなのでしょう。友達と一緒に遊ぶともっと楽しいだろうなぁと思います。

キャラクターとか、風景とか(絵というのかな?)がポップで好きなので、そのうち復活したいと思っています。しかしキャラメイク的なことを考えると、いまはおっさんキャラしかないので、幅が広がるといいなあと薄く思ったりもしています。

 

早くもかすかな飽きを感じてきたのでこのゲームについてはここまで。

次回で書くゲームについては書くことがいっぱいある気がする!たぶん!

ではおやすみなさい。

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ブログを始めた時のいちばん最初のアイコンに戻しました。

いまは髪がボブくらいなのでウソ画像だけどそのうち伸びるだろ。

 

散文 #4

「いつもこうやってんの?変な力が入るでしょ」

(またそれかよ知ってる。私の竹刀の握り方がおかしいって言うんでしょ。先生にも注意されてるから分かってるけど癖になってるんだよなぁ。って、先輩!?)

「あ、ありがとうございます!」

「はは。俺は先生じゃないからよく分かんないけど、左手は軽く添えるかんじでいいんじゃないの?」

「はい!やってみます!」

 しかし私はすでに力が入りっぱなしである。竹刀の握り方を気にしている場合ではない。なぜなら彼は、私の憧れの先輩なのである。

 

 私は小学生の頃から剣道を習っていた。祖父が指導をしている道場で週に1回だけ稽古に参加していた。「稽古に参加」と中途半端な表現をしたのは何故かというと、私自身剣道への情熱があまりなかったのと、かつ祖父も甘かったからで、要するに適当にやっていたのだ。

 

 先輩は大学生で、この町へ越してくる前から剣道をやっていたらしく、うちの道場に来てまもなくから小さい子達の稽古の相手をしたり、世話を焼いたりする役割となっていた。

 なにしろ小さな町の小さな道場なので、普段稽古に顔を出すのは、体力づくりの名目で通わされている子供(私もこれだった)か、中年以降の大人や年寄りがほとんどだ。そこへシュッとした同じ年頃の男性が入ってきたのだ。高校生の私から見たら大人っぽくも見えるし、憧れるのが普通だと思う、うん。

 

 初めて会話をしてからの先輩と私は少しずつだけど打ち解けていった。稽古の合間には色々とお話もしたし、たまには稽古後の暗い道を一緒に帰ることもあった。お互いに自分達は仲良しかもしれないなぁと感じていたとは思うけど、それ以上でも以下でもなく、ただの「同じ道場に通う仲間」だった。

 

 そんなある日、道場の隅で袴を着けるのを手間取っていた私に、先輩が手を貸してくれていた。着替えの手伝いは普段から小さい子達にもやってあげていたし、私も深く考えていなかったのだが、今思うともう少し気をつけているべきだった。

 その時、私の背中側で袴の紐を持ってくれているはずの先輩の手が、何故か私のお尻を触っている。あれれおかしいな?と思い少し体をよじったりしても、先輩の手は私のお尻の上で動いている。頭のすぐ右上のほうから先輩の息が聞こえてくる。その手は下に移動していく。やばいぞと思った私は体ごと振り返った。先輩は私から体を離して目を合わさず紐を結び、無言のまま稽古に戻っていった。

 

 そのあと数週間、先輩は学校の用事という理由で稽古に顔を出さなかった。一方、私はどうしていたかというと、先輩のある意味痴漢とも思える行為についてひとりで悶々と考えていた。傷付いたような気持ちにもなったけど、これ以上考えてもしょうがないなと思い始めた頃、先輩が稽古に復帰した。

 その日、話をしなければいけないと思った私は先輩と一緒に帰ることにした。そしてそのまま促されるままに先輩の家に行った。ご家族は留守だったので先輩の部屋に直行してすぐ服を脱がされた。私は特に抵抗もせず成りゆきに従っていた。先輩は私の肩や胸を噛み、歯形をつけて笑っていた。

 

 私は先輩に突然お尻を触られたとき、傷付いた気持ちになった。でもその後先輩の部屋に行ったのは、好奇心もあり自分もある意味望んでいたことだ。その相反する気持ちがどちらも自分の中にあるということが処理しきれず、しんどくなった私はできるだけ先輩と二人きりにならないようにした。そして祖父の目もあると思うとさすがにいたたまれず、頃合をみて道場に行くのもやめた。

 

 数ヵ月後に先輩は電話をくれた。

「剣道やめたの?」

「はい」

「そっか、なんかごめんね」

 というあっけない会話で幕を閉じた、その時の私には難易度の高い交際だった。

 今となっては、現在の先輩が突然女性のお尻を触ったりしていないことを祈るばかりである。でも体を噛むのはちょっと面白いので続けててもいいんじゃないかなと思う。

 

 

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ここのところ『散文』というタイトルでブログを書いてることが多いのですが、客観的にみて手抜きっぽいかなぁと思い始めました。

しかしこれというタイトルが思い浮かばないのも確かで、書き始めるときの動機や書いた後の内容のことを考えても、「なんかあのときこんな気持ちになったなぁ」だけだったりするので、結論としては特にタイトルをつけなくてもよいのではないかと思っています。

なので今回も『散文』です。このシリーズはどのくらい続くかな。

普段ゲームをしていることが多いので、「2016年上半期にプレイしたゲームまとめ」みたいなものを、自分用の覚え書きとしても残したいのですが、色々材料が必要な気がしてちょっとめんどくさがっています。気が向いたらそのうち書くかもしれません。

それではまた。

 

散文 #3

中学生のとき私には二人の友達がいて、仲良し三人組だった。

メンバーのひとりはミカちゃん、もうひとりはアオイちゃん、そして私。

 

ミカちゃんは、ちょっと不良ぽい女の子だった。禁止されているのに髪を染めたり、授業の途中で帰ってしまうような子だった。

アオイちゃんは、美少女なのだけれどほとんど笑わず、いつも隅っこでうつむいているような子で、皆から「暗い」と言われ敬遠されていた。

私は普通の子。クラスのカーストでも中の下くらいの、がんばってなんとかしぼり出しての評価が「普通の子」だったと思う。

 

三人が仲良くなったきっかけは、私がなにかの理由でクラスの皆から仲間外れにされてたときにアオイちゃんが気にかけてくれて、そこにミカちゃんも加わったのが始まりだったと思う。

私はわりと大人しい子供だったのだが、他人の機嫌を取るのが下手なようで、リーダー格の子に従わず怒らせたりして仲間外れになることがあった。それに中学校は小学校と違って暢気なままではいられず、居心地が悪いなあと思っていた。勉強も難しくなってくるし、部活動も忙しい、習い事もある。担任の先生は意識が高くて一年生のうちから受験に備えようなどと言う。

そんな、中学生にはよくありそうな理由でうんざりしていたときに、ミカちゃんとアオイちゃんと仲良くなって、私はなんだか救われたような気がしていた。

 

ミカちゃんはちょっと怖いのでつい顔色を伺ってしまうのだけど、私がビクついていると、なんだか腹が立つなぁなどと言いながらガムをくれたりする。そして面白くてエグい話をいっぱいしてくれた。

アオイちゃんは三人でいるときはよく笑った。お花のように可愛くて、ミカちゃんとわたしのマスコットだった。ほのぼのしていて、なにより親切だった。

三人はいつも一緒にいて、放課後にはミカちゃんの家に遊びに行き漫画を読んだりゲームをしたりした。三人でいるときは色々なことを忘れられて、快適だった。

 

そんなある日、母が「もうミカちゃんと遊ばないように」と命令を下した。理由は、ミカちゃんが不良ぽいのと、ミカちゃんのお兄ちゃんとその友達が本気の不良だからというのは分かっていた。しかし彼らは私達には無関心で話すことすらなかったので、なぜミカちゃんちで遊んじゃだめなのかとだいぶ反論したけど聞き入れてもらえなかった。

 

私は少しずつ遊びに行く機会を減らした。

アオイちゃんのお家はわりと放任主義のようで、私以外の二人はその後も変わらず仲良くしていたようだ。

だんだんと二人が話しかけてくれることが少なくなっていき、放課後に誘ってくれることもなくなった。

私は寂しかったけど、母の言いつけだからと自分で自分を慰めていた。しかし本当は、不良の仲間だと思われるのは私もイヤだったのだと思う。もしかすると少しホッとしていたかもしれない。

 

もう少しで中学を卒業する頃、隣のクラスだったアオイちゃんが突然たずねてきた。暗いとまで言われていたアオイちゃんなのに、その時はとても明るい顔をしていて可愛かった。

アオイちゃんが、「私彼氏ができたよ!」と言う。

とても嬉しそうだったので一緒に喜んだ。

相手は誰なのか聞いたら、ミカちゃんのお兄ちゃんの友達だった。正直(大丈夫かな!?)と思ったけどアオイちゃんの様子を見ていると大丈夫という気がしたし、単純に私に報告に来てくれたのがうれしかった。

 

三人は別々の高校に進んだ。

ミカちゃんはたぶんあの調子で自由にやっているのだろう。というか、遊ばなくなってからは話していないので、詳細は分からない。

アオイちゃんは通学中のバスでたまに見かけた。話すことはなかったけど、彼氏に合わせてどんどん風貌が変化していくアオイちゃんの様子を見ながら、羨ましいような寂しいような気持ちになった。

 

成人式のとき。ミカちゃんは出席していなかった。アオイちゃんはすでに結婚して子供が二人いた。中学生のときに報告してくれた彼氏が旦那さんだという。美少女だったアオイちゃんなのにぷっくりと太っていて、なんというか複雑な気持ちだったけど幸せそうだったのは確かだ。

 

私にとって友達だったのはミカちゃんとアオイちゃんだけなのではないか、と時折思うことがある。戻りたいと思うこともある。しかし不良と思われたくなくて二人から離れたという負い目もあって、行動はできずにいる。

高校生以降の友人関係といえば、友達と認識しかけた人達からは大抵の場合「ゆるくハブられる」という展開で関係を離脱してきた。それはあくまでも自分自身の問題なのだが合わせるのがめんどうなので、女性のちょっとした群れにはあまり近寄らないようにしている。単体ならわりと大丈夫だが、しかしそれだと憧れの「宅飲み」をするには弱いのだ。

あの頃のミカちゃんとアオイちゃんが数人ずつ集まった群れなら、私も受け入れてもらえるかもしれない。希望は捨てないでおこうと思う。

 

散文 #2

 会社のお昼休憩の時間。社食でカレーライスを食べ、デスクへ戻ろうとエレベーターを待っているときに隆から携帯へメッセージが入った。

ー 今日仕事終わりにちょっと付き合ってもらいたいんだけど

 隆は同僚で斜め前のデスクに座っている、明るくサバサバしたやつであまり男性ということを意識せずに、仕事の愚痴や相談を遠慮せずに話せる友人でもあった。ただその頃はなにかに悩んでいる様子で、日によって明るかったり暗かったりするし、心配して状況を聞き出そうとしてもはぐらかされて、なんだか気持ち悪いのだった。そんなわけでそのメールが届いたときも(急になんなのこいつうざー)としか思わなかった。

ー 時間はあるけど、今日付き合えるかどうかは議題によるかなー

ー どうしても聞いてもらいたいことがあるから時間作って

ー はあー分かりましたよ

 返信しつつエレベーターに乗り込んだ。

(今夜あたりアキオから連絡があるかもしれないけどまいっか...)と考えながら。

 

 アキオもまた同僚で、私の好きな男で、時々二人で会っていた。彼は社内にいる年上の美人(人妻)と不倫をしているらしいと噂に聞いていたが、直接本人に聞いたことはない。なぜなら聞くのが怖かったからだ。私はアキオに惚れていて、相手は遊びのつもりだと分かっているけど、会うのをやめることができなかった。

 アキオは気が向いたときに連絡をしてきた。私はできるかぎり時間をあけて会うようにしていた。でないと次にいつ会えるか分からないから。

 アキオは仕事ができるようで社内でも常に忙しそうだったけれども、資格を取るための勉強や趣味のサークルや、そしてたぶん人妻との逢瀬の時間を優先しているらしく、私との約束はほぼできないに等しかった。前もって週末の予定を聞いても答えは返ってこない。なのでアキオに合わせるしかない。それでも会えるときはとても楽しいのであった。

 アキオの好ましいところは色々あるのだが、第一にとても話がおもしろいひとだった。頭が良いのだと思う。ひたすら笑える話をしていたかと思うと胸がぎゅうと掴まれるような印象的な言葉を吐いたりする。私はアキオに夢中で、単なる遊び相手と思われていても、一緒にいられる時間が少しでもあればそれでかまわないと思っていた。ただ少し疲れてきていたのは事実だ。二人で会うようになって数ヶ月になるけどいつまで経っても私の優先順位は下のほうで、なんだか不毛だなあと思い始めていた。

(人妻との不倫がそんなに良いものかな...刺激的ってやつか...)と考えながら廊下をのそのそと歩いていると、アキオが封筒をパタパタと振りながら上司と何かを話しつつ、目の前を横切っていく。私と目が合うこともない。

ふん、と思いながら脇に目をやると、隆はデスクに突っ伏して寝ていた。

(はぁーどいつもこいつも...)などと思いながらため息をついた。

 

「はいはいお待たせー」

「おそくね?」

「ていうか隆ってこんなお店知ってたの?ってかんじなんだけど」

「そこは気にすんな」

「払えるの?私千円しか持ってないよ」

「そんなはした金で生きていけると思ってるのが怖いわ」

「で、なんなの?なにかやらかしたの?」

「いやそれがさー、聞いてよ、」

  その時二時間程かけて隆が語ったことは、これまでの隆の人生で最高に愛した女性との出会いから別れまでのお話(本当かどうかは分からないが無闇に壮大な話だった)。そして今は私のことを好きで、結婚したいくらいに思っているということ、だった。

 唖然としてしばらく声が出なかったけれどもその場でお断りした。理由はいくつかあるのだが、決定的だったことをここに記しておく。

 私は文房具を集めるのが趣味だ。それは隆も知っていて、今回の企てに際して私にプレゼントを用意してくれていた。キャラクター物のノートやボールペンや文具がぎっしり詰まった愛らしいギフトボックスだった。せっかくのプレゼントなのでありがたく頂戴したが、私はキキとララがプリントされたボールペンを使いたいなどと言ったことは無いし、実際に使ったことも一度足りとて無いはずだ。それにキキとララを好んで使用するような女を想定しているのであればそれは大きな誤りというものだし、好きだというわりには私のことをまったく理解していない隆君なのであった。それがお断りする第一の理由だった。

 ただアキオの話になった時に(時々会っていることは言っていない)、隆はなにか探るようなとても真剣な顔をしていて、アキオとのことを薄々知っているのだなと思った。そして私も隆も、決定的なことを目の当たりにするのを怖がっている、同類なのだなと思った。

 しかし隆はその後もめんどくさいやつで、職場で私に対してほぼ無視を決め込むようになった。それも仕事に支障が出るレベルで。さすがに挨拶くらいしろよ、と言ったこともあるけど無駄だったので、友人をやめ携帯のアドレスも拒否した。そのあと隆は異動となり、私は退職してしまったので、今どうしているのかはまったく分からない。

 

 しばらくしてアキオは難しいなんとかいう資格試験に合格し、涼しい顔をして転職し上京してしまい、やがて会うことはなくなった。美人の人妻は残されていたけど彼女も涼しい顔をしていた。

 その後に東日本大震災が起こった。アキオは数日後に電話をくれた。第一声が「生きてたんだ!」だった。でもなんだかうれしかった。その後数回連絡が来たけど会うのを渋っていたら「君のエッチな写真を撮って送りたまえ」という指示が来たので無視した。その後連絡は来ていない。